事務所ブログ

2014.08.08更新

前回,夫の下から逃れて行動の自由を確保した妻が,
夫の暴力から逃れ続けるための手段として,
DV防止法の接近禁止命令があるという話をしました。
では,逆に夫の側は,妻から接近禁止命令の申立てがあり,
呼出状が送付されたという場合,どうすればよいでしょうか。
前回と少し設例を変え,結婚して北千住で生活していた夫婦が
夫婦喧嘩の末,妻が船橋の実家に戻ってしまった,
という設例を前提にお話しします。

呼出状の送付を受けた夫にありがちな行動として,
たかが夫婦喧嘩で大げさすぎる,妻と話し合いたい,
という考えから,妻本人やその周辺の人物と連絡をとり,
妻との話し合いを求める,ということがあります。
人情としては分からなくもない考え方なのですが,
呼出状の送付を受けた後に妻本人やその周辺の人物,
設例の船橋の妻の実家の両親とコンタクトを取ることは,
できる限り避けなければなりません。

というのは,第一に,接近禁止命令の申立ては,
「もう絶対に会いたくない」という強い拒絶の意思の表れで,
そのような強い拒絶の意思を持つ人と話し合ったところで,
話し合いが上手く行く可能性はほとんどないからです。
接近禁止命令の申立てがあった時点で,
当事者が直接話し合って解決できる段階は既に過ぎており,
調停・裁判等の手段以外での解決は困難と考えるべきです。

第二に,話し合いを求めてコンタクトを繰り返す行為は,
妻等に対するつきまとい行為と評価されてしまい,
接近禁止命令の理由づけとされる危険性があるからです。
話し合いを求める際に暴言などを吐いてしまえば,
よりいっそうその危険性は高まります。
妻の側では,接近禁止命令の申立てをした時点で,
録音等の準備をしてこちらの接触を待ち構えている,
というくらいに考えておく方が賢明です。

第三に,妻等に対するつきまとい行為があったと評価され,
接近禁止命令が出されてしまうと,
その後の離婚調停や裁判でも,DVがあったことが前提に,
それが離婚の原因となったと認定される可能性が高く,
後々の離婚調停・裁判にも悪影響を及ぼすからです。

こうした理由から,呼出状の送付を受けた夫側としては,
妻側と接触して話し合いをしようという考えは捨てて,
妻側から絶縁宣言があったという覚悟の下,
離婚調停・裁判までを見据えた対処をする必要があります。

そして,接近禁止命令の申立てまでに状況が進んだ以上は,
自力で対処していくことはかなり困難になりますから,
最低限,節目ごとに同じ弁護士に相談してアドバイスを受け,
できれば弁護士に依頼してください。

というのも,あくまで個人的な印象ですが,私が見る限り,
DV防止法に基づく保護命令,特に接近禁止命令は,
夫側にさほど大きな負担を課すものではないことから,
裁判所もかなり安易に命令を出す傾向があります。
こうした傾向を踏まえて,的確な防御活動を行い,
可能であれば接近禁止命令を出させないようにし,
仮に接近禁止命令が出たとしても,
離婚調停・裁判への影響を可能な限り少なくすることは,
自力ではかなり難しいことだからです。

いずれにせよ,呼出状の送付を受けたら,
まずは気持ちを落ち着けて,法律相談に行きましょう。
当事務所なら土日・夜間を含む24時間相談対応,
仕事が終わってからの相談にも喜んで応じます。
もちろん相談料は初回60分まで無料です。

投稿者: 豊和法律事務所