事務所ブログ

2014.07.20更新

平成26年7月17日の最高裁の判断が
子や母・血縁上の父に及ぼす影響について
一昨日,昨日と分析してきましたが,
今日は法的な父に及ぼす影響について分析しましょう。

設例を少し変え,以下のような事案を前提にします。
夫Aと結婚して北千住駅近くのマンションに住んでいたBは,
同窓会で母校のある広島に宿泊した際,
再開した同級生のCと肉体関係を結ぶに至り,
その後,Bは妊娠してDを出産した。

このような場合,これまでの家庭裁判所実務では,
DNA鑑定によって父子関係の不存在が科学的に証明されれば,
父子関係を否定して子の戸籍を父の戸籍から外すという扱いを
一般的に行っていたように思います。
現に私自身,DNA鑑定の結果父子関係が否定されたため,
戸籍の更正が認められたという案件を手がけております。

ところが,本件判断の下では,嫡出否認の訴え以外の方法では,
いかにDNA鑑定で父子関係が存在しないという結果が出ても,
父子関係を否定することは許されないことになります。
すなわち,AがDの出生を知ってから1年を経過した後は,
AがDとの間の父子関係を解消する手段は原則としてなく,
Aは血のつながらないDへの扶養の義務を負わされ続ける,
ということになります。
本件判断の事案では,法的な父が血のつながらない子を養育する
強い意思をお持ちのようなので問題になっていませんが,
血のつながらない子を養育する熱意のある父はむしろ希であり,
そんな父の扶養を受けることが子にとって本当に幸福なのか,
非常に疑問です。

そして,Aが血のつながらないDの扶養を免れるためには,
できるだけ早期にBに対しDとの父子鑑定を要求し,
Bがそれに応じなければ嫡出否認の訴えを提起する,
という手段を採らざるを得ません。
ただ,父子鑑定の要求や嫡出否認の訴えの提起は,
Bに対しては「お前は他の男と子を作っただろう」,
Dに対しては「お前は俺の子ではない」という宣告に他ならず,
こんな侮辱的な宣告を受けたBやDにしてみれば,
たとえ父子鑑定の結果Aの子であることが判明したところで,
元の夫婦関係・親子関係に戻ることはないでしょう。
そんな要求をした時点で,早晩AとBは離婚することになります。

結局,Aとしては,離婚の高いリスクを覚悟で父子鑑定を要求するか,
全てを諦めて血のつながらない子でも扶養する覚悟を据えるか,
どちらかを選ぶしかありません。

以上見てきたとおり,本件判断は,
法的な父には血のつながらない子の扶養を強要し,
子には血のつながらない父を法的な父として押し付ける反面,
血縁上の父の扶養を受ける余地を狭めるという,
ほとんど誰も得をしない帰結を導くように思います。

とはいえ,今後の実務は本件判断に従って動いていきます。
本件判断によってなるべく不利益を受けることのないよう,
少しでも不安があるならば,当事務所の無料法律相談をご利用下さい。
土日・夜間や事務所外の相談にも対応していますので,
例えば産まれたばかりの子供がいるので外出できないという方でも,
託児スペースのある場所等で相談に応じさせていただきます。

投稿者: 豊和法律事務所