事務所ブログ

2014.07.30更新

弁護士費用というと,高額の着手金・報酬...
というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
当事務所は,報酬をできるだけ低く抑える相談にも,
積極的に応じさせていただいておりますが,
それでも数十万円という着手金・報酬は安くはありません。

ただ,着手金・報酬よりも意外とかさむのが旅費・日当です。

一般の民事事件でも家事事件でも,裁判や調停の提起は,
相手方の居住地の裁判所で行うのが原則ですので,
たとえば,北千住で生活していた夫婦のうちの妻が,
夫のDVから逃れて広島市内の実家に逃げ帰った場合,
妻が行う離婚調停の申立先は東京家庭裁判所になります。
広島市の実家から相談に行きやすいのは広島の弁護士ですが,
広島の弁護士に離婚事件の処理を依頼したら大変です。

調停は,おおむね月に1回のペースで期日が入ります。
そして,初回で調停が終わるということはほとんどなく,
最低でも2~3回,平均で5~6回は期日が入ります。
そうすると,東京までの往復交通費が新幹線利用で約4万,
東京での宿泊費が1万5千円として,
毎期日5万5千円の出張旅費を支払う必要があります。
5回分なら27万5千円ですから,かなり重い負担です。
しかも,その弁護士がグリーン車を利用したり,
宿泊費が高いホテルを利用すればさらに負担が増えます。
さらに,これとは別に最低1日分の日当が発生します。

このように考えると,弁護士に事件を依頼するのであれば,
裁判や調停を起こす裁判所の近くの弁護士に依頼するのが
ベターということになります。

刑事事件でも似たような状況が生じます。
たとえば,多くの法律事務所が集中する虎ノ門から,
東京拘置所まで接見に行くとすれば,
虎ノ門から小菅までの運賃が往復780円,
それに事務所から片道で小一時間かかりますから,
接見時間も含めればほぼ半日を費やしますので,
半日分の日当を請求されるでしょう。
2週間の未決勾留期間中,2日に1回のペースで
7回接見し,その後公判段階で3回接見した場合,
日当を接見1回に月1万円まで下げてもらっても,
旅費・日当で11万円もかかってしまいます。
これに対し,北千住の法律事務所や当事務所であれば,
東京拘置所まですぐ近くですから,
旅費も少額か請求されない可能性が高くなりますし,
所要時間が短いので日当も少額になりやすいです。
ちなみに,当事務所は,東京拘置所での接見であれば,
原則旅費・日当は請求しておりません。

こんなことを言うと,東京地家裁の事件に関しては
まったく逆なのでは?と突っ込まれそうですが,
実は虎ノ門から霞が関までの片道交通費は170円,
南千住から霞が関までの片道交通費は200円です。
しかも南千住から有楽町までJRなら170円。
交通費の面での不利益はほとんどないのです。

当事務所では,裁判や調停をどこで提起するのかや,
どうやって弁護士を探せばよいかという点も含めて,
適切にアドバイスをさせていただいております。
修習地の新潟,過去に仕事をしていた広島の他,
同期弁護士や出身大学のネットワークを使い,
遠隔地の弁護士でも紹介が可能です。
相談料は初回60分無料,土日・夜間も相談対応。
まずは電話かメールでご連絡ください。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.29更新

今日は夕方から,弁護士会主催の中小企業研修に参加してきました。
中小企業支援を主たる業務としている弁護士でなくとも,
事務所を経営している弁護士は自身も中小企業の経営者ですから,
中小企業支援に関する情報を得ることには大きなメリットがあります。
今回の研修も,優れた講師の方から有益な情報を得られましたが,
中でも特に印象的だったのは,お客様との打ち合わせの重要性です。

講演のなかで,中小企業支援では,企業の真の強味を活かす必要があり,
その企業の経営者は身近な事柄であるだけに,逆にそれに気付かない。
そこをアドバイザーが補い,真の強味を活かす方法を探って行くべき,
というお話が講演の中に出てきたのですが,
これは弁護士と依頼者様との関係にもあてはまることです。

私のこれまでの経験の中でも,依頼者様とじっくり打ち合わせをして
本当に良かったと痛感したことは少なくありません。
たとえば,こんなことがありました。
別の弁護士の下で自己破産をしてもらったのに債権者から請求が来た,
という相談を受けて,自己破産の記録を確認したところ,
その債権者は自己破産の債権者一覧表に記載されていませんでした。
こうなると,その債務は免責されない可能性が発生してしまいます。

相談者様がその債務のことを弁護士に言っていなかったとすれば,
必ずしも弁護士の失態とはいえないのですが,
自己破産ではすべての債務を申告する必要があることをきちんと説明し,
債務に関する資料はすべて事務所にご持参いただくようにするなど,
全債務を把握する努力をしていれば避けられたかもしれないミスです。
その意味で,弁護士の責任がないとはいえないでしょう。

これはもう,請求に応じるしかないかなと思ったところで,
相談者様がふと,「何年も請求してこなかったのに今さら...」
とおっしゃったのを聞いて,それなら消滅時効の主張ができる!
と気付くことができました。
その後は,消滅時効を前提に債権者と交渉し,
うまくトラブルを解決することができました。
もし,相談者様との打ち合わせを中途半端にしたまま,
請求に応じることにしていたら,と思うと,
相談者様の話をじっくり聞くことの重要性を痛感します。
同時に,相談者様がうかつに請求に応じることなく,
相談にきてくれたからこそ,解決ができたわけですから,
相談者様の的確な判断に敬意を表したいところです。

当事務所では,依頼者様からじっくりお話を聞くため,
法律相談を初回60分無料としております。
土日・夜間も相談に対応しており,この場合も相談料は同じです。
また,ご都合で自宅から出にくいという方についても,
上野,北千住近辺までなら交通費無料で相談に出向いております。
ぜひ電話かメールでご連絡ください。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.26更新

借金の問題を起こさないよう気をつけていても,
予想外の出来事から返済計画が狂ってしまうことは
それほど珍しいことではありません。

急なリストラや会社の倒産で職を失ってしまう場合,
自分や家族の病気・介護等で退職を余儀なくされた場合など,
予定どおりの収入が得られなくなる場合のほか,
保証していた親族の自己破産や交通事故を起こした場合など,
予定外の債務を負わざるを得なくなる場合,
さらには,経営していた会社の倒産のように,
収入・支出の両面で予定が狂うこともあります。

そうした場合でも,転職に成功して相応の収入があり,
可処分所得の中で相応の返済計画が立てられる場合であれば,
前回お話しした任意整理の手続を進めることで,
さほど手間や費用をかけず,資格制限等も受けることなく
借金関係のトラブルを解決することができます。

ただ,経営していた会社の倒産の場合を典型として,
現時点の収入を前提とすると債務の返済が困難という場合,
法的整理の手続である自己破産に踏み切らざるを得ません。

「戸籍が汚れる」とか「債権者に顔向けできない」とか,
自己破産にネガティブなイメージを持っている方もおられますが,
戸籍には自己破産の事実は一切記載されません。
破産手続開始決定と免責決定については官報で公告されますが,
官報を毎日隅々まで見ている人などほとんどいませんから,
自己破産したことを他人に知られる可能性は極めて低いのです。

また,債権者との関係でも,いずれ債務を返済できるなら別として,
既に返済不能ならば,債務者の資産が流出したり劣化する前に,
早急に法的整理を行って債権回収を図る必要が生じます。
破産法18条1項は,破産手続開始の申立権を債権者に与えていますが,
それは破産手続が債権者にとってもメリットになるからなのです。
債権者のためを思うなら,むしろ積極的に自己破産すべきです。

自己破産は,債務者が返済不能な債務を抱えた状態という,
債権者にとっても債務者にとっても身動きできない状態から,
債権者に対しては可能な限り多くの債権回収を,
債務者に対しては経済的な再起の機会を提供することで,
双方の利益の最大化を図る制度なのてす。
自己破産で悩んでいる方は,そのことをよくお考え下さい。

ただし,自己破産には相応のデメリットも伴います。
警備員や保険外交員など一部業種の資格制限が生じるほか,
信用情報機関のブラックリストに載ってしまうため,
クレジットカード作成やローンはしばらくの間不可能になります。
また,破産手続の中では,破産に至った経緯や今後の生活の展望等,
破産者の生活面に踏み込んだ厳しいチェックが行われます。
確実に免責を得て経済的再生を図ろうとするのであれば,
嘘や隠し事をするのは論外として,裁判所の疑問に真摯に回答し,
必要な説明に積極的に協力していく必要があるのです。

自己破産したほうがよいのかどうか,
自己破産するとして,どんな形で手続を進めたらいいのか,
お悩みの方は,一人で抱え込まずに御相談下さい。
当事務所は土日・夜間を含む24時間,
初回60分無料で法律相談に対応しております。
法律事務所への出入りを見られたくない,という場合には,
ご指定の場所に出向いて相談に応じることもできます。
その際,往復交通費だけはご負担をお願いしておりますが,
地元南千住を中心に,上野,北千住,町屋程度までならば
交通費も無料とさせていただいております。
まずは電話かメールで,ご連絡下さい。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.24更新

昨日は借金の問題を自力で解決する方法をお話しましたが,
もはや自力での解決が困難になった場合には,
なるべく早めに弁護士等に相談して対処する必要があります。

ところで,弁護士等に依頼して借金問題を解決するというと,
自己破産を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。
たとえば,経営していた会社が倒産したことによって,
巨額の連帯保証債務を負うことになってしまった,
などという場合は,個人の資力での返済は不可能であり,
自己破産以外の選択肢は考えにくいことになります。

これに対して,債務の額がそれほど多額ではなく,
返済条件次第で返済していくことが可能な場合には,
自己破産という手続をとらず,債権者と話し合いをして,
返済条件の変更(リスケジュール)を行うこともあります。
これを一般に,任意整理と呼びます。
任意整理は,自己破産などの法的整理と違い,
信用情報の面での悪影響が小さく,
自己破産に伴う資格制限等も受けないで済むうえ,
時間と費用を節約できるというメリットがあります。
そこで,任意整理で解決可能な事案については,
任意整理をおすすめしております。

ただ,任意整理の場合に注意してほしいのは,
自己破産や個人再生などの法的整理の場合と異なり,
返済条件は変わるものの債務の完済が必要であって,
原則として債務の額が減ることはない,ということです。
弁済条件を変更すること自体,本来は約束違反であり,
任意整理はその約束違反を交渉で実現するものですから,
債務の額が減らないのはやむを得ないとお考えください。

なお,かつては過払金という形で債務を大幅にカットできたり,
金融業者からお金を取り戻せるといったこともありましたが,
過払金発生の原因であるグレーゾーン金利での貸付けは,
現在では一切行われておらず,
また,過去のグレーゾーン金利の貸付けについても,
既にほとんどが時効にかかってしまっていますので,
現在では,過払金による債務のカットはほとんど期待できません。

昨日もお話ししたとおり,債権者の数が少なく,
しかも1か月か2か月で支払を再開できる場合であれば,
債権者に連絡をとって自力で解決することをお勧めしますが,
債権者の数が多かったり,短期間の支払再開が困難な場合,
債権者との交渉は弁護士等に委ねてしまい,
ご自身は生活の再建に専念する方が効率的です。

当事務所では,相談者様の状況をじっくり伺い,
自力解決で何とかなるのか,それとも任意整理をするか,
さらには法的整理まで進まざるを得ないのか,
状況に応じた適切なアドバイスを行っております。
相談は初回60分無料,土日・夜間の相談も可能ですし,
仕事の都合等で事務所に行けないという場合は,
出張しての相談にも応じます。
上野・北千住近辺であれば出張旅費もいただきません。
弁護士費用についても,法テラスの利用等,
依頼者様のご負担をできるだけ減らせるような形で
適切にアドバイスしておりますので,
まずは電話かメールでご連絡ください。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.23更新

借金でお悩みの方はまず相談を,という言葉を
弁護士やその他士業の方のホームページ等でよく見ます。
既に多額の借金を抱えてしまっているとか,
月々の返済で生活が圧迫されているとかいう状態ならば,
なるべく早く相談に来ていただいて対処するのが最善ですが,
そもそも,弁護士等に相談しに行かなければならないという,
そんな状態を避けるためにはどうしたらよいでしょうか。

誰でも考えつく最も確実な方法は,借金をしないことです。
借りさえしなければ返す必要もないのですから,
実現できればこれほど確実な方法はありません。
ただ,借金と全く無縁で生活できる人など希でしょう。
これを書いている私自身にしても,奨学金の返済がありますし,
事業をしておられる方なら借入はほぼ必須でしょう。

そこで,次善の策として,可処分所得をしっかり把握し,
可処分所得の範囲内で借り入れる必要があります。
その際,見込み収入は少なめに,見込み支出は多めに,
それぞれ見積もっておけば,返済計画に余裕が出ます。
もう少し借りても返せる,というくらいの余裕がないと,
不意の支出や収入減で簡単に返済計画が頓挫してしまいます。
特に,自営業者の方や歩合給で収入が安定しない方は,
収入見込みを厳しめに考えておかなければなりません。

そして,仮に不意の支出や収入減で返済計画が頓挫して,
1~2か月だけ返済が困難になったというような場合は,
黙って返済をやめてしまうのではなく,
債権者と連絡をとって事情を話し,
返済猶予などの対応ができないか相談してみましょう。
あえて弁護士等を頼まずとも,債権者と相談することで
トラブルを解消している方はたくさんおられます。
逆に,債権者に何も言わずに支払を止めてしまうと,
債権者が不信感を抱いてしまうため,
返済が可能になっても信用されずに裁判を起こされたり,
面倒なことになりかねませんので注意してください。

借入をするにあたって,以上のことに気をつけていれば,
借金をめぐるトラブルを回避できる可能性は高くなります。
もっとも,不意の交通事故や病気で職を失ったり,
職を失わないまでも収入が激減することはあり得ますし,
交通事故を起こしてしまって多額の賠償債務を負ったため,
他の借金の返済が困難になるなんてこともあります。
上でお話ししたような短期的な支払困難ではなく,
元々の返済計画に従った返済が数ヶ月以上できない場合や,
債務の額が大きい場合,債権者数が多数の場合などは,
弁護士等に依頼して債務整理を行うことをおすすめします。

当事務所では,相談者様の状況をお伺いして,
弁護士等を依頼せずに解消出来るレベルの問題か,
もはや弁護士等に依頼すべき問題か,判断して,
適切な対処をアドバイスさせていただいております。
法律相談に行くにも仕事があるから,という方も,
土日・夜間を含む24時間の相談に対応しております。
また,当事務所までの交通費の支出も厳しい,
ということであれば,事務所外の相談にも対応しますし,
北千住・上野程度までの距離なら出張旅費も無料です。
相談料自体も初回60分まで無料ですので,
お気軽に電話かメールで当事務所までご連絡ください。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.22更新

専門家に相談に行きたいと思った場合でも,
弁護士に相談に行けばいいのか,
あるいは,他の士業の人に相談したらよいのか,
色々な専門家がいてよく分からない,
なんてことがあるかもしれません。

簡単に各士業が主として担当する職務を挙げると,
弁護士は法廷立会,すなわち裁判や調停など,
司法書士は登記や戸籍関係の事務
行政書士は公官庁に対する申請等の事務,
弁理士は特許等の知的財産に関する事務,
税理士は税務関係の事務,
公認会計士は企業会計関係の事務,
社会保険労務士は労務管理に関する事務と,となります。

ですから,たとえばパテント絡みの相談であれば,
弁理士さんに相談しにいくのが適切ですし,
税金関係の相談であれば税理士さんに相談するのが適切です。
ただし,各士業間には,法廷立会は原則として弁護士のみ,
というような特定の士業にのみ認められた職域がある一方,
弁護士が担当する法律事務の一部の相続関係業務について,
司法書士も相続登記の前提として事務処理を行うなど,
相互に職域が重複していることもありますので,
後者の場合はどちらに御相談いただくこともできます。

そして,複数の専門家の中で誰を選ぶかに関しては,
第一に,その専門家のホームページ等をチェックして,
その専門家がどんな分野の業務を得意とするか確認してください。
たとえば,同じ弁護士でも,企業法務に強い人,
医療訴訟に強い人,家事関係に強い人など様々です。
自分の悩みに関する分野に強い専門家を選ぶのがよいでしょう。

第二に,必ず一度は直接面会して,人柄を確かめてください。
少額とはいえない報酬を支払って事件を委任する以上,
委任に先立って,その専門家がどんな人となりなのか,
安心して事件の処理を依頼できる人なのか,
自分の意見をきちんと聞いて事件処理に反映してくれるのか,
確認しておかないと,後悔することになりかねません。
最近は無料相談を行っている専門家も多いですし,
有料だとしても相談料自体はそれほど高額ではない場合が多いので,
必ず直接会って相談することをおすすめします。

なお,仮に畑違いの専門家に相談に行ってしまったとしても,
無料相談ならコストがかかるわけではありませんし,
その専門家を通じて,別のより適した専門家を紹介してもらい,
結果としてスムーズに話を進められる場合もあるので,
その意味ではまず,無料の相談を試されてもよいでしょう。

なお,当事務所の法律相談は初回60分まで無料,
土日・夜間を含む24時間相談に対応しております。
どんな専門家に相談すればよいかも含め,
親身になってお話を聞き,アドバイスさせていただきます。
必要に応じて,相談者様の御希望の地域の他士業の方々,
たとえば北千住の司法書士さん等のご紹介もいたしますので,
まずは電話かメールでご連絡ください。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.20更新

平成26年7月17日の最高裁の判断が
子や母・血縁上の父に及ぼす影響について
一昨日,昨日と分析してきましたが,
今日は法的な父に及ぼす影響について分析しましょう。

設例を少し変え,以下のような事案を前提にします。
夫Aと結婚して北千住駅近くのマンションに住んでいたBは,
同窓会で母校のある広島に宿泊した際,
再開した同級生のCと肉体関係を結ぶに至り,
その後,Bは妊娠してDを出産した。

このような場合,これまでの家庭裁判所実務では,
DNA鑑定によって父子関係の不存在が科学的に証明されれば,
父子関係を否定して子の戸籍を父の戸籍から外すという扱いを
一般的に行っていたように思います。
現に私自身,DNA鑑定の結果父子関係が否定されたため,
戸籍の更正が認められたという案件を手がけております。

ところが,本件判断の下では,嫡出否認の訴え以外の方法では,
いかにDNA鑑定で父子関係が存在しないという結果が出ても,
父子関係を否定することは許されないことになります。
すなわち,AがDの出生を知ってから1年を経過した後は,
AがDとの間の父子関係を解消する手段は原則としてなく,
Aは血のつながらないDへの扶養の義務を負わされ続ける,
ということになります。
本件判断の事案では,法的な父が血のつながらない子を養育する
強い意思をお持ちのようなので問題になっていませんが,
血のつながらない子を養育する熱意のある父はむしろ希であり,
そんな父の扶養を受けることが子にとって本当に幸福なのか,
非常に疑問です。

そして,Aが血のつながらないDの扶養を免れるためには,
できるだけ早期にBに対しDとの父子鑑定を要求し,
Bがそれに応じなければ嫡出否認の訴えを提起する,
という手段を採らざるを得ません。
ただ,父子鑑定の要求や嫡出否認の訴えの提起は,
Bに対しては「お前は他の男と子を作っただろう」,
Dに対しては「お前は俺の子ではない」という宣告に他ならず,
こんな侮辱的な宣告を受けたBやDにしてみれば,
たとえ父子鑑定の結果Aの子であることが判明したところで,
元の夫婦関係・親子関係に戻ることはないでしょう。
そんな要求をした時点で,早晩AとBは離婚することになります。

結局,Aとしては,離婚の高いリスクを覚悟で父子鑑定を要求するか,
全てを諦めて血のつながらない子でも扶養する覚悟を据えるか,
どちらかを選ぶしかありません。

以上見てきたとおり,本件判断は,
法的な父には血のつながらない子の扶養を強要し,
子には血のつながらない父を法的な父として押し付ける反面,
血縁上の父の扶養を受ける余地を狭めるという,
ほとんど誰も得をしない帰結を導くように思います。

とはいえ,今後の実務は本件判断に従って動いていきます。
本件判断によってなるべく不利益を受けることのないよう,
少しでも不安があるならば,当事務所の無料法律相談をご利用下さい。
土日・夜間や事務所外の相談にも対応していますので,
例えば産まれたばかりの子供がいるので外出できないという方でも,
託児スペースのある場所等で相談に応じさせていただきます。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.19更新

昨日は,平成26年7月17日の最高裁の判断について,
子の視点からの影響を分析をしました。
その中で,夫の嫡出推定(民法772条)が及ぶ状況では
子どもを産まないようにすべき,ということを書きましたが,
これは親の側がすべきことですね。お詫びして訂正します。
後ほどお話しするとおり,血縁上の父の協力が得られれば,
血縁上の父と子を養子縁組することもできますが,
これは母や血縁上の父が主導して行う手段であり,
子の側で積極的にできるという手段ではありません。
となれば,子の側から血縁上の父を法的にも父とする手段は,
全くないということになります。

では,母や血縁上の父に何かできることはないのでしょうか。
昨日の設例と同様,夫Aと結婚して広島市内に住んでいたBは,
Aの家庭内暴力に苦しみ,元同級生のC(男性)に相談を持ちかけました。
Cは親身になって相談に乗り,適切なアドバイスをしてくれたため,
BはAと別居することができ,実家近くの北千住で生活を始めました。
その後,BはCと親密な関係になり,Cとの間に子Dが誕生しました。
という事案を用いて,説明していきましょう。

BがAと離婚し,かつ,離婚の300日後以降にDを産んだ場合,
Aの嫡出推定は及ばず,AがDの法的な父となることはありません。
この場合,Dは,BとCが結婚すればBC間の嫡出子になりますし,
仮に結婚しなくても,認知があればCが法的な父になります。

これに対し,Aの嫡出推定が及ぶ状態でDを産んだ場合,
Aが1年以内に嫡出否認の訴え(民法775条)を提起して,
これが認められない限り,Dの法的な父はAであり,
BやCの側からその関係を消すことは認められません。
仮にDNA鑑定でAD間の親子関係の不存在が明らかでも,
父子関係は否定されないというのが本件判断だからです。

そして,D出生後にBがAと離婚しても状況は変わりません。
それどころか,離婚してBがDの親権を得たとしても,
Bが戸籍の筆頭者となっている場合でなければ,
DはAの戸籍に残ってしまい,Bの戸籍には移りません。
さらに,その後BがCと結婚したとしても,
Cの戸籍に入るのはBだけで,DはAの戸籍に入ったままです。

こうした戸籍の状況を避ける手段はいくつかありますが,
その1つが,CとDとの養子縁組という手段です。
CとDが養子縁組すれば,養子Dは養親Cの戸籍に入り,
Aの戸籍から除籍されます。
ただし,Aとの間の父子関係が消えることはありません。

なお,最高裁は,子の地位の安定という観点を強調しますが,
法的な父子関係は父の子に対する扶養義務を基礎づけると同時に,
子の父に対する扶養義務をも基礎づけるという意味を持ちます。
すなわち,上記設例で,DがもっぱらBとCに扶養され,
一切Aからの扶養を受けずに成長していったとしても,
年老いたAに扶養の必要が生じれば,Dが扶養しなければなりません。
生活保護への世間の目が厳しくなる一方の昨今では,
DがAの扶養を免れることは困難でしょう。

結局,本件判断の下でB・Cが採り得る最善の選択肢は,
Bが早期にAと離婚し,Aの嫡出推定が及ぶ状況で子どもを産まない,
ということに尽きることになります。

次回は,法的な父,上記設例でいうAの立場から,
本件判断の影響を検討してみたいと思います。
本件判断に関するものに限らず,離婚や親子関係でお悩みの方は,
遠慮なく当事務所の無料法律相談をご利用下さい。
土日・夜間も相談に対応しておりますし,
実家で親御さんも含めて話を聞きたいということであれば,
ご自宅に出向いてお話しさせていただきます。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.18更新

平成26年7月17日,最高裁判所は,
DNA鑑定等で生物学的な父子関係の不存在が証明された場合でも,
親子関係不存在確認の訴えによって父子関係を否定することはできない,
という判断を示しました(以下,本件判断といいます)。
結論・理由づけともに問題がある部分が多々ある本件判断ですが,
今後の実務は本件判断に従って動いていくことになります。
そこで,本件判断によって家事事件の関係者がどのような影響を受けるか,
検討してみましょう。

まず,父子関係の下で父親の監護・養育を受ける子から見た影響です。
最高裁は,子の法的地位の安定を,本件判断の主たる理由としており,
本件判断の下では,仮にDNA鑑定等で生物学的な父子関係が否定されても,
そのことを理由に法的な父子関係の不存在を主張され,
監護・養育の利益や相続権などを失うおそれはなくなります。
ただ,法的な父子関係を否定できないということは
その反面,血縁上の父を法的な父とする余地もないことを意味します。

例えば,こういう事案を想定してみましょう。
夫Aと結婚して広島市内に住んでいたBは,
Aの家庭内暴力に苦しみ,元同級生のC(男性)に相談を持ちかけました。
Cは親身になって相談に乗り,適切なアドバイスをしてくれたため,
BはAと別居することができ,実家近くの北千住で生活を始めました。
その後,BはCと親密な関係になり,Cとの間に子Dが誕生しました。

この場合,BとAとの間の離婚が成立していなければ,
Dの法的な父はAになります(民法772条1項)。
それどころか,Aとの離婚後300日以内でも,
同じ結論が導かれてしまいます(民法772条2項)。
Aが嫡出否認の訴え(民法774条)を提起しない限り,
Dの法的な父は永久にAのままということになります。
後にBがAと離婚し,Cと再婚して,Dと家庭生活を営んでいても,
CがDの法的な父となることはありません。
Dが,Aとの親子関係の不存在確認の訴えを提起し,
DNA鑑定でAとの間の父子関係の不存在を証明したとしても,
法的な父子関係は否定されないというのが本件判断の帰結です。
したがって,Dは,血縁上の父であるCに扶養を求めることができず,
Cの法定相続人となることもできません。

最高裁としては,Aとの間で父子関係が認められるのだからよい,
と考えているのかもしれませんが,
血縁上の父子関係が存しないAにDの扶養を委ねてよいのか,
委ねたところで実効性がどれほどあるのか,
非常に疑問が残るところです。

本件判断の妥当性の有無はともかく,これを前提とするならば,
Dの扶養等は法的な父であるAに委ねざるを得なくなります。
こうした事態を避けたいのであれば,Bとしては,
Aとの離婚成立後300日以内には絶対に子どもを産まない,
という選択をしなければなりません。

今回,本件判断について,子から見た影響を検討してみました。
次回以降,他の関係者から見た影響についても検討していく予定です。
なお,本件に関係する悩みをお持ちの方は,
一人で抱え込まずに,当事務所の無料法律相談をご利用下さい。
土日や夜間も相談に対応しておりますし,
夫が居場所を探し回っている等の事情で外出が難しいようならば,
ご指定いただいた場所に出向かせていただきます。

投稿者: 豊和法律事務所

2014.07.17更新

本来請求できるはずの残業代が支払われていないことがある,
ということが広く知られるようになり,
未払残業代の請求に踏み出す人も増えているようです。
正規に割り増した残業代の受給は労働者の当然の権利であり,
会社は法令に従った残業代の支払義務を負っていますから,
その意味では未払残業代の請求をためらう必要はありません。

ただ,せっかく未払残業代の請求をするのであれば,
主張する残業時間のできれば全部,
それが不可能でもなるべく多くの部分を認めてもらい,
最大限の利益の回復を図りたいところです。
そのためには,残業についてどのような証拠があるか,
それを用いてどのように裁判所を説得していくか,
裁判所に訴えかける手段として何を選ぶのか,
十分検討しておく必要があります。

また,未払残業代請求に踏み切った場合,
会社との間でしこりが残ることは避けられません。
それでも会社と上手くやっていけるのかどうか,
そんな会社は見切って退職する予定なのだとすれば,
再就職先のあてはあるのかどうか,
そうした戦略を事前に十分練っておく必要があります。

これら事前準備を,職場で仕事を続けながら,
あるいは就職活動をしながら独力でやっていくことは,
必ずしも容易ではないでしょう。
そうしたときには,まずは無料の法律相談で,
今後の方針について話をしてみましょう。
必ずしも弁護士に委任する必要はありません。
自分の現在の状況を整理して冷静に分析し,
今後の対処を考えるだけでも十分に意味があるのです。

未払残業代の請求は,今まで働いてきた職場との対立だけに,
いったんは未払残業代の請求をしようと思ったけれども,
事情が変わって請求するつもりがなくなった,
といったことも起こります。
心が揺れるのがむしろ当然なのです。
そうした場合にも,私は,常に依頼者様に寄り添い,
適切なアドバイスをしていくよう心がけております。
お仕事が忙しく,平日の昼間の相談は無理だよ,
という場合,土日・夜間の相談にも応じております。
お仕事や家庭の都合で事務所には行きにくい,
という場合でも,ご指定の場所に出向いて相談に応じます。
その際,南千住からの交通費だけはいただいておりますが,
北千住や上野あたりの近距離であれば無料としております。
まずは電話かメールでご連絡下さい。

投稿者: 豊和法律事務所

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